NHK BS世界のドキュメンタリー「スペースシャトル その成功と挫折 ~世界を変えた宇宙開発~」("The Space Shuttles Last Flight" : 2011)[DVD]

NASAのスペースシャトル計画の始まりから終わりまでの過程を、計画に関わった者達の証言を交えながら振り返るドキュメンタリー作品。

NASAのスペースシャトル計画は、巨額な費用を要する宇宙開発事業において、再利用できる機体を開発し、低コスト化を実現する事がその目的とされた。コロンビア、チャレンジャー、アトランティス、ディスカバリー、エンデバーの5機が開発され、その内チャレンジャーとコロンビアの2機については、全乗組員ごと事故で喪う事になったのは、良く知られているところである。

NASAは60~70年代のアポロ計画を経て、地球の周回軌道を回るシャトルをアメリカという国家の威信をかけて開発した。超高性能な精密機器の塊であるシャトルの第一号機コロンビアは、1981年に初の有人飛行を行い、地球を周回した後、地上への帰還に成功する。この時、25000枚にも及ぶ耐熱タイルの内、16枚が大気圏再突入時に剥離している事が分かり、機体が高熱に耐え、無事帰還できるかどうかは大きな賭けであった。

その後、シャトルは何度もミッションをこなし、その有用性を裏付けていくのだが、一方でコストは思惑どおり下げられず、寧ろメンテナンスに巨額の費用と多くの人員を要する事が問題視されていく。そんな矢先に、1986年チャレンジャー号の爆発事故が起こる。この事故で7名の乗組員が犠牲となった。打ち上げ直後の爆発で機体が大破したのだが、その原因は燃料ロケットのOリングにある事が、調査の末に判明する。当日は冷え込みが強く、Oリングが低温で弾性を失っており、燃料噴出時に設計通りに機能しなかったのである。ところが、NASAの上層部はこの問題を予てから把握しており、関連企業からの告発を揉み消していた事が発覚する。

シャトル計画の頓挫が懸念される中、宇宙開発は新たなフェーズに移行し、再びシャトルに脚光が集まる。相変わらずコスト面には問題があったが、ハッブル宇宙望遠鏡や国際宇宙ステーションのモジュールを運搬する為に、シャトルはその活躍の場を広げていく。ところが、2003年、シャトルは再び悲劇に見舞われる。コロンビア号が大気圏再突入に失敗し、帰還を果たす事無く大破してしまったのだ。打上げ時に燃料タンクから剥落した発泡断熱材が、シャトルの左翼に衝突し、耐熱タイルに大穴を空けていた事が原因だと疑われたが、この件でもNASAの上層部は、その事実を大気圏再突入前に把握していながら、事故が起きた後も発泡断熱材に問題がある事を明確に否定した。事故調査委員会が、実機と同じ模型を使って発泡断熱材の衝突実験を繰り返し、原因の立証を行って初めてNASAは発泡断熱材の問題を認めた。要するに、チャレンジャー及びコロンビア、二度の悲劇は起こるべくして起こったと言っても過言では無いのである。

ところで耐熱タイルは機体のアルミのボディとの間にフェルトを挟み、普通の接着剤で貼り付けてあるらしい。これはタイルに対して、アルミが熱で膨張してしまう事で生じるズレを解消する為に考案された策だが、ハイテク機器がこの様なローテクで覆われているのは、なかなか興味深かった。シャトルは引退し、宇宙開発は民間企業を交えた新しいフェーズを迎えようとしているが、これからは民間人も続々と宇宙に飛び立つ事になる。コスト削減を追求する余り、安全をなおざりにせぬように、開発には万全を期して欲しい。

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